交通事故では衝突による衝撃で、首に損傷を受けてしまうことが多いです。
首の損傷により生じる疾患には主に、①頚椎捻挫型、②神経根症型、③脊髄症(脊髄損傷)型の3つのタイプのほかに、眼、耳、心臓、咽頭部の異常など自律神経症状を主体とする バレー・ルー症候群と呼ばれるものもあります。
ここでは、バレー・ルー症候群の診断のポイント、症状の特徴および治療方法の概要、そして、後遺障害等級との関係についてまとめています。
1.バレー・ルー症候群とは
1926〜1928年にフランスのバレーとルーによって報告された症候群です。痛みに加えて、筋肉の凝り、耳鳴り、めまいなどの多彩な症状が認められるものですが、首の損傷によって自律神経(主に交感神経)が直接的もしくは間接的に刺激を受けていることで発症していると考えられています。
2.バレー・ルー症候群の診断
一般に明確な診断は難しいとされていますが、診断のポイントとして、①自覚症状を主体として他覚的所見に乏しい、②交感神経節ブロック(主に星状神経節ブロック)によって症状の改善がみられることがある、③レントゲン所見上、骨折・脱臼がないことなどが挙げられます。
また、自律神経の中枢が存在する脳幹を栄養している椎骨動脈に血流不全を引き起こすような頚椎の経年変化(加齢変化)が認められる場合には、可能性はさらに高くなります。
3.バレー・ルー症候群の症状
自覚症状が中心となり、以下のものが認められます。
①内耳の症状:めまい、耳鳴り、耳づまり
②眼の症状:眼のかすみ、疲れ、視力低下(眼精疲労)
③心臓の症状:心臓部の痛み、脈の乱れ、息苦しさ
④咽喉頭部の症状:かすれ声、喉の違和感、嚥下困難
⑤頭痛、頭重感
⑥その他の症状:上肢や全体のだるさ、上肢のしびれ、注意力散漫など
4.バレー・ルー症候群の一般的な治療
原則的にはむち打ち症(頚椎捻挫)の治療に準じるとされていますが、いくつか異なる治療法があります。
①頚部交感神経節の1つである星状神経節のブロックを行うこと
星状神経節周囲に局所麻酔剤を注射して交感神経節の働きを軽減させ、症状を改善させようとするものです。
②抗交感神経薬であるαブロッカーを使用することがあること
5.後遺障害等級との関係
バレー・ルー症候群は、自覚症状が主体であり、他覚的な所見が乏しいですので、基本的には14級9号に該当するかどうかが問題となります。
具体的には、事故状況、事故時の衝撃、症状の内容・程度・推移、治療内容、治療期間、通院状況、画像所見・神経学的所見、予後所見等を総合的にみて、後遺障害14級9号に該当するか判断されていると思います。
(令和5年10月7日更新)
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