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交通事故の受傷に対する治療は、自由診療による場合と社会保険(健康保険、労災保険等)を利用する場合の大きく2つに分けられます。ここでは、自由診療と社会保険による治療費の利用例などをまとめています。
1.自由診療と社会保険
自由診療は、診療報酬の1点単価を医療機関が自由に決められるもので、1点20円〜25円程度が一般的です。これに対して健康保険では1点単価が10円、労災保険では1点単価が12円とされています。
このため、通勤・業務上の交通事故であれば労災保険を、それ以外の交通事故であれば健康保険を利用することにより、自由診療の場合と比べて治療費を大きく抑えることができます。
交通事故の受傷に対する治療でも社会保険を利用することができますので、下記の例を参考にご利用いただけたらと思います。
2.社会保険の利用例
社会保険の利用により治療費を抑えることのできる典型例として、①相手方に任意自動車保険がついていない場合、②被害者の方にもある程度の過失が認められる場合、の2つが挙げられます。
①相手方が任意保険に加入していない場合には、まず相手方の自賠責保険から支払限度額(傷害で120万円)の範囲で賠償金を受け取ることが基本になります。しかし、120万円という限度額がある中で治療費の占める割合が大きくなれば、治療費以外の損害(慰謝料等)について受け取れる額は必然的に小さくなります。このため、自由診療でなく、社会保険を使用することで治療費を抑えることができ、120万円の支払限度額を最大限に使うことができます(例1)。
また、②被害者の方にもある程度の過失が認められる場合には、自由診療の場合と比べて、過失相殺される額を少なくする効果があります(例2)。
例1:相手方が任意保険に加入しておらず、自賠責保険に請求する場合(相手過失100%)
自由診療 | 健康保険 | |||
治療費 | 80万円 | 40万円 | ||
健保給付額 28万円 | 患者負担分 12万円 | 健保では3割自己負担 | ||
慰謝料等 | 70万円 | 70万円 | ||
上記合計 | 150万円 | 28万円 | 82万円 | |
治療費 | 80万円 | 28万円 | 12万円 | |
被害者受取額 | 40万円 |
| 70万円 | 受取額に30万円の違い |
例2-1:被害者に20%の過失がある場合(相手に任意保険あり) −健康保険使用−
自由診療 | 健康保険 | |||
治療費 | 200万円 | 100万円 | ||
健保給付額 70万円 | 患者負担分 30万円 | 健保では3割自己負担 | ||
料等 | 100万円 | 100万円 | ||
上記合計 | 300万円 | 70万円 | 130万円 | |
過失相殺20% | 60万円 | 14万円 | 26万円 | 治療費が少ない分、相殺される額も抑えられる。 |
賠償額 | 240万円 | 56万円 | 104万円 | |
治療費 | 200万円 | 56万円 | 30万円 | |
被害者受取額 | 40万円 |
| 74万円 | 受取額に34万円の違い |
なお、上記の例で被害者の方が無過失の場合は、下記のとおり受取額は変わりません。
自由診療 | 健康保険 | |||
治療費 | 200万円 | 100万円 | ||
健保給付額 70万円 | 患者負担分 30万円 | 健保では3割自己負担 | ||
慰謝料等 | 100万円 | 100万円 | ||
上記合計 | 300万円 | 70万円 | 130万円 | |
治療費 | 200万円 | 70万円 | 30万円 | |
被害者受取額 | 100万円 |
| 100万円 | 受取額は変わらず |
2-2:被害者に20%の過失がある場合(相手に任意保険あり) −労災保険使用−
自由診療 | 労災保険 | |||
治療費 | 200万円 | 120万円 | ||
労災給付額 120万円 | 患者負担分 0万円 | 労災では自己負担なし | ||
慰謝料等 | 100万円 | 100万円 | ||
上記合計 | 300万円 | 120万円 | 100万円 | |
過失相殺 20% | 60万円 | 24万円 | 20万円 | |
賠償額 | 240万円 | 96万円 | 80万円 | |
治療費 | 200万円 | 96万円 | 0万円 | |
被害者受取額 | 40万円 |
| 80万円 | 受取額に40万円の違い |
3. まとめ
上記のとおり、交通事故の治療を受ける時に社会保険を使うことで明らかに受取額が違ってくることがあります。保険会社からも社会保険の使用を求められることがありますが、自由診療を使わないと症状回復に明らかに支障をきたすような場合を除き、社会保険を使用することで特に問題ないと思われます。
(令和5年10月5日更新)
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