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 交通事故では、脊髄の障害により痛み・しびれ・麻痺などの症状が現れることがとても多いです。下記では、これらの症状の後遺障害認定基準と等級認定のポイントについてまとめています。 

 

1.脊髄の障害の後遺障害認定基準 

  脊髄の障害については、下記2のとおり、自動車損害賠償保障法施行令別表第一1級1号、2級1号、別表第二3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号に定められており、労災保険の認定基準に準拠して等級認定されます。

 

2.等級認定のポイント

(1)脊髄損傷の存否

  脊髄の障害については、自賠責保険の実務上、残っている障害の程度も問題となりますが、それ以上に残っている障害が脊髄の損傷によるものといえるかどうか(脊髄損傷の存否)が問題となることが多いといえます。

 この点、自賠責保険の実務上、脊髄損傷と診断されるような症状の存否とこれを客観的に裏付けるMRI、CT等の画像所見(脊髄圧迫所見、髄内輝度変化)や神経学的検査所見(腱反射、病的反射、知覚、筋力等)の存否等が確認されます。

 

(2)障害の程度

 脊髄損傷を客観的に裏付ける所見が認められる場合には、障害の程度が判断されます。労災保険の認定基準では、脊髄損傷の等級認定は、原則として、身体的所見と画像で裏付けることができる麻痺の範囲と程度により行うこととされています。 

 自賠責保険の実務上も、麻痺の範囲と程度により等級認定をしていますが、「脊髄症状判定用」という医師に対する自賠責保険独自の照会様式を用いて、上肢・下肢の運動機能の点数に着目して認定されます。

 また、脊髄の障害の等級には、随伴する脊柱の障害、膀胱直腸障害等を含むこととされています。ただし、脊髄の障害の等級よりも、随伴する障害の等級が重い場合には、随伴する障害の等級を下回らないよう、総合評価により等級認定されます。

 

【脊髄の障害の認定基準】

自賠法施行令

労災保険の認定基準

別表第一1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

a 高度の四肢麻痺

b 高度の対麻痺

c 中等度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する

d 中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する

別表第一2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時他人の介護を要するもの

a 中等度の四肢麻痺

b 軽度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する

c 中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する

別表第二3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のため労務に服することができないもの

a 軽度の四肢麻痺

b 中等度の対麻痺

別表第二5級2号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの

a 軽度の対麻痺

b 一下肢に高度の単麻痺

別表第二7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの

a 一下肢に中等度の単麻痺

別表第二9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの

a 一下肢に軽度の単麻痺

別表第二12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの

a 運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺

【麻痺の程度の意義と具体例】

 

意 義

具体例

 

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができないもの

・完全強直またはこれに近い状態にあるもの

・上肢においては、三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

・下肢においては、三大関節のいれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの

・上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの

・下肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一下肢の支持性及び随意的な運動性をほとんど失ったもの

 

 

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるもの

・上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量のもの(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの

・下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であること

 

 

障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているもの

・上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの

・下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの

 

3.参考事例

 脊髄損傷について適切な後遺障害等級が認定された事例を紹介しています。

(1)中心性脊髄損傷による巧緻運動障害等について自賠責後遺障害12級から5級に変更された事例

(2)脊髄不全損傷による四肢機能の障害等について自賠責後遺障害12級から9級に変更された事例

(3)頚髄損傷による四肢痺れ等について自賠責後遺障害非該当から現症9級・既存12級に変更された事例

(4)頚髄損傷による四肢痺れ等について労災障害等級9級が認定された事例

 

4.まとめと留意点

 脊髄損傷の後遺障害認定では、症状の経過や画像と神経学的所見で症状を裏付ける所見があるかなど確認され、事故による脊髄障害と認められるときには麻痺の範囲と程度に基づき等級が認定されます。

 この等級は主に担当医師が作成する所見に基づいて認定されますので、実際の症状の内容・程度と担当医師の作成する回答内容にギャップが生じないよう、担当医師とコミュニケーションをとっておくことも大切になります。

(令和5年10月5日更新)

 

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