傷害による損害:積極損害、休業損害、慰謝料

 傷害による損害は、「積極損害」、「休業損害」および「慰謝料」から構成されています。

 

1.積極損害

  積極損害は、自賠責保険の実務上、「治療関係費」、「文書料」および「その他の損害」に分けられます。

  治療関係費として、応急手当費、診察料、入院料、投薬料、手術料、処理料、通院費、転院費、入院費、退院費、看護料、諸雑費、義肢等の費用、診断書等の費用が認められます。

  文書料として、交通事故証明書、印鑑証明書、住民票等の発行に必要な費用が認められます。

  その他の損害として、近親者の事故地までの交通費・宿泊費や観光旅行等のキャンセル料等が認められます。

 

2.休業損害

  休業損害は、自賠責保険の実務上、給与所得者、事業所得者、パートタイマー・アルバイト・日雇労働者等、家事従事者を対象としており、基本的な計算式は休業損害額=休業損害日額×休業日数とされています。 任意保険も、基本的には自賠責保険の取扱いに準じています。

1)給与所得者

  給与所得者とは、自賠責保険の実務上、雇用主に労務を提供し、その対価として賃金等を得ており、1週間の労働時間が30時間以上の方とされています。1週間の労働時間が30時間未満の方は、パートタイマー・アルバイト・日雇労働者等として別の計算方法が適用されますので注意が必要です。

  休業損害日額は、勤務先に作成してもらう休業損害証明書に基づき「事故前3ヶ月の給与額÷90日」で計算されます。この額が5700円に満たない場合には、定額の5700円に引き上げられます。

  休業日数は、勤務先に作成してもらう休業損害証明書に基づき認定されます。有給休暇を使用した場合も休業日数に含まれます。また、休業当初から連続して欠勤・有給休暇を取得している場合は、欠勤日・有給休暇取得日に隣接した土日・祝日も休業日数に含まれます。なお、来期の賞与の減少額が立証されている場合は、賞与の減少も休業損害として認められます。

 

2)事業所得者

  事業所得者とは、自賠責保険の実務上、白色申告事業主または青色申告事業主をいいます。

  休業損害日額は、「(事故前1年間の収入額(固定費を除く)−必要経費)×寄与率)÷365日」で計算されます。収入額は、原則として、事故前年の確定申告書に基づいて認定します。上記の計算式で算定された額が5700円に満たない場合には、定額の5700円に引き上げられます。

  休業日数は、原則として実治療日数とされています。ただし、傷害の態様や職種等を勘案して、治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度とすることができるとされていますので、傷害の程度が重い方や仕事への支障が大きい方は注意が必要です。 

 

3)パートタイマー・アルバイト・日雇労働者等

  パートタイマー・アルバイト・日雇労働者等とは、自賠責保険の実務上、雇用期間を定めて雇用主に対して労務を提供し、その対価として賃金等を得ており、1週間の労働時間が30時間未満の方をいいます。

  休業損害日額は、時間給、一日あたりの勤務時間が定められており、その条件で継続的に稼動していることが認められる場合には、「時間給×1日あたりの勤務時間」で計算されます。この方法で計算することが困難な場合は、「事故前3ヶ月間の収入÷事故前3ヶ月間の実稼働日数」で計算します。この額が5700円を下回る場合であっても、実額が認定されます。

  休業日数は、実治療日数の範囲内とされています。ただし、傷害の態様、職種等を勘案して、治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度とすることができるとされていますので、傷害の程度が重い方や仕事への支障が大きい方は注意が必要です。 

 

4)家事従事者

  家事従事者とは、自賠責保険の実務上、性別・年齢に関係なく原則として家事を専業にする者とされています。1人で生活を営んでいる方や時々家事の手伝いをする程度の方は家事従事者には該当しない取扱いとなっています。

  休業損害日額は、定額の5700円とされています。

  休業日数は、原則として実治療日数とされています。ただし、傷害の態様等を勘案して、治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度とすることができるとされていますので、傷害の程度が重い方や仕事への支障が大きい方は注意が必要です。

 

3.慰謝料 

  慰謝料は、自賠責保険基準、任意保険基準および弁護士会基準で大きな違いが出てくることがあります。

1)自賠責保険基準

  自賠責保険基準の慰謝料は、「慰謝料日額4200円×慰謝料対象日数(治療期間の範囲内で実治療日数の2倍に相当する日数)」で計算されます。ただし、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の施術は2倍されません。

  治療期間は、事故日から治療最終日までをいいますが、治療最終日の転帰が「治ゆ」以外の場合は、治療最終日に7日を加算した期間までとされます。

  下記のギプス装着期間については、実治療日数と同様に取り扱われます。

   @長管骨(上肢は上腕骨・橈骨・尺骨、下肢は大腿骨・脛骨・腓骨)および脊

  A長管骨に接続する三大関節部分(上肢は肩甲骨・鎖骨・手根骨、下肢は腸骨・恥骨・

   坐骨・膝蓋骨・距骨・踵骨・足根骨)−長管骨を含め装着 

  B肋骨・胸骨−体幹部に装着

 

2)任意保険基準(一例)

  任意保険における慰謝料算定方法の一例として、入通院期間を基礎として、通院頻度および傷害態様を加味して慰謝料を算定します。 

 

(3)弁護士会基準 

  入通院期間を基礎とする表が使用されます。通院期間が長期にわたり、かつ不規則の場合は実日数の3.5倍程度が慰謝料算定のための通院期間の目安とすることができます。また、傷害の部位・程度によっては、2030%程度増額されます。

  むちうち症で他覚症状がない場合は上記とは別の表が使用されます。この場合、慰謝料算定のための通院期間は、その期間を限度として、実治療日数の3倍程度が目安とされます。

 

 

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 ◇逸失利益-妻(家事労働)

 ◇逸失利益-会社代表者 ※

 ◇慰謝料-労災保険金との関係 ※

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