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精神医学・精神医療の基礎知識

 事故の受傷では、身体の症状によるつらさに加えて、精神的にも非常につらい思いをして、精神科や心療内科への受診が必要になることもあります。精神科等の専門医は一般に、精神医学に基づいて治療を行います。

 ここでは、精神医学・精神医療の基礎的なことをまとめています。

 

1.精神医学とは

 精神医学は、人間の精神現象を扱う学問で、正常と異常の両方を対象としています。

 「人間の心」という奥深い、複雑なものを対象としているため、自然科学であると同時に、人文科学的な性質も持っています。

 

2.精神医療の目的

 「医学の方法により心の悩みをいかに解決するか」が究極の目的とされています。

 

3.異常と正常の判定方法

 精神医療の目的は、上記2のとおり、「医学の方法により心の悩みをいかに解決するか」とされているため、正常か異常は最大の関心事とはされていません。

 しかし、精神医学における正常と異常の判定に関する考え方として、(1)平均規準(統計的事実)と価値規準(理想)、(2)病気という視点、(3)事例性(社会の中で問題か)の3つの視点が挙げられます。

(1)平均規準と価値規準

  平均規準は統計的事実との乖離、価値規準は実用価値または理想との乖離で判定されます。

(2)病気という視点

  精神的な病気といえるかどうかで判定されます。

(3)事例性

  疾病のために社会の中で問題となっているかどうかで判定されます。

 

3.精神疾患の分類

(1)従来の分類−外因性・心因性・内因性

 精神疾患は従来、下記の3つに分類されていました。

 ①外因性…脳に直接侵襲を及ぼす身体的病因による場合−脳器質性精神病、症状精神病、中毒性精神病

 ②心因性…性格や環境からのストレスなど心理的原因によって生じる精神障害−神経症、適応障害

 ③内因性…原因不明だが、遺伝的素因が背景にあると想定されている精神障害−統合失調症、躁うつ病

 

(2)新しい分類−操作的診断基準

 CT,MRI,PET,SPECT等の技術や精神疾患の研究の進展により、心因性・内因性精神障害に器質的基盤がないという見解は保てなくなっていること、また、心因性の疾患にも遺伝性が認められることが明らかになっていること等から、上記(1)の分類に妥当性が認められなくなりました。

 精神疾患の信頼性向上と世界的な標準化のため、「操作的診断基準」(疾患Xの診断を下すには、Aがなくてはならず、B,C,D,Eのうちの2つ異常がなくてはならない、といった操作的な基準)というものが設定されるようになりました。

 具体的には、米国精神医学会(APA)の「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM)第3版以降や世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第10版(ICD-10)に備えられています。

 

4.精神疾患の診断

 DSM-VICD-10の適用は、精神科の診断の終了でなく、出発点とされています。診断名は、患者の治療に必要な情報の一部に過ぎないため、診断の定式化が必要とされています。

 定式化とは、個々の症例の臨床上重要な特徴(診断と診断理由、鑑別診断と今後の検査予定、治療の短期・中期目標など)を列記し、そこから治療方針の決定、予後の予測を立てることとされています。

 

5.精神機能

 精神機能とその異常には、次のようなものが挙げられます。

精神機能 定義・概念 左記の異常
意識 外界からの刺激を受け入れ、自己を外界に表出する心的機能 意識混濁せん妄もうろう状態 等
知覚 感覚器官を通して外界に存在するものを意識し、その意味を知ること 錯覚幻覚(幻聴、幻視、幻臭等) 等
記憶 過去の経験が意識のうちに受け入れられ、心的痕跡を残し、時を経てから再び意識内に再生される心的現象 記銘力障害、記憶減退、健忘 等
見当識 現在自分が置かれている環境(日時、場所、周囲の状況、人物など)を正しく認識する能力 失見当または見当識障害
睡眠 生理的な覚醒水準の低下で、外的・内的刺激により覚醒する 不眠、過眠、睡眠時随伴症 等
知能 単に記憶・学習した知識を応用するだけでなく、新しい課題を解決するための合理的思考、効率的対処に関する総合的機能 知的障害(精神遅滞)、認知症 
言語 口語言語と書字言語にわけられ、両者ともに表出面(言語表出あるいは書字)と受容面(言語理解あるいは読字)をもつ 失語
思考 言語を媒介として行われ、目標に向かい概念が次々想起され論理的に連結し、事実に即して判断および分析され、問題解決がなされる精神活動 ○思考過程の異常…迂遠、保続、途絶、連合弛緩、言語新作、観念奔逸思考制止
○思考内容の異常…妄想
○思考体験の異常…強迫恐怖、支配観念、作為思考、考想吹入考想奪取考想伝播 
感情 ○感情…快、不快、喜怒哀楽などの主観的な心の状態
○気分…特別な対象や内容を持たず比較的長く持続する感情の状態
○情動…状況に反応して急激に生じ、持続の短い感情の動き
○気分の異常…抑うつ、爽快、多幸症
○感情の興奮性の異常…感情鈍麻情動麻痺易刺激性
○感情調節の異常…感情失禁
○感情体験の異常…離人 等
意志、欲動、行動 ○意志…行動の源となる欲動や欲望を目的、方法、結果に適うように抑制したり発動させたりする精神作用
○欲動…人間を内から駆り立て、生命や生活の維持に必要な行動を起こす力
○行動… 欲動や意志により生じた全体的な運動的表出
○意志の異常…意志による統制の障害、意志発動の障害(制止昏迷等) 
○欲動、行動、精神運動の異常…精神運動障害、精神運動制止、食欲異常、性欲異常等
自我意識 自己自身に対する意識 離人(症)、させられ(作為)体験、解離症状
人格・性格 人間の精神機能の持続的な特徴のうち、情意面の特性 パーソナリテイ障害(人格障害)、人格変化
自律神経 交感神経副交感神経の2種類あり 自律神経失調症

 

6.治療法

 精神医学における治療法は、身体(脳)に働きかける身体療法(代表は薬物療法)と心に働きかける精神療法に大きく分けられます。

(1)薬物療法

 薬物療法は、様々な精神症状を消失または軽減させることができるため、大きな役割を持っています。

 薬物療法で使用される薬物には、抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、精神刺激薬、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬、抗認知症薬などがあります。

 

(2)精神療法

 精神療法とは、「言語的、非言語的な対人交流を通して精神的な問題を解決し悩みを軽減することを目的とした精神医学的及び心理学的治療法」と定義されています。

 精神療法が重要な役割を果たすのは、神経症性障害(不安障害、身体表現性障害など)、うつ病性障害、パーソナリティー障害、精神病性障害の寛解期などの精神医学的障害、一般身体疾患による心理的反応、などが挙げられます。

 主な精神療法として、心理教育、支持的精神療法、来談者中心療法、精神力動的精神療法、対人関係療法、認知療法、行動療法があります。

 

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