薬の基礎知識

 交通事故での怪我の治療でも、薬は大きな役割を果たしています。ここでは、薬の基礎的なことをまとめています。

 

1.薬とは

 薬とは、生命体の生存過程に影響を及ぼす化学物質、と定義されます。

 交通事故での薬とは、交通外傷患者の治癒過程に影響を及ぼす化学物質、と定義されます。

 

2.薬の役割

 薬の役割は、患者自身の治癒力・回復力を高めることとされています。薬自体が病的状態を治癒させるのではないことに注意が必要です。

 交通事故での薬の役割として、@救命、A患者自身の治癒力・回復力を高めること、B最終的に社会復帰をすること、が特に重視されています。

 

3.薬による治療(薬物療法)のときに医師が考えること

 薬物療法のときに医師が考えることとして、@薬の使用が本当に必要か、Aどの薬を使用することが最も有効か、Bどのような投与方法・投与量が最も望ましいか、C薬の効果をどのように判定するか、D薬の投与をいつ中止するか、が挙げられます。 

 

4.薬の投与方法

 薬の投与方法として、@経口投与(内服、内用)、A注射(皮下注射、筋肉注射、静脈注射など)、B吸入、C直腸内投与、D経皮投与、E口腔内投与などがあります。

 

5.薬の経路

 例えば、錠剤を経口投与された後の経路の概要は、下記のとおりです。

 胃(錠剤が崩壊)→十二指腸(成分が放出、腸液に溶解)→小腸(吸収)→肝臓(一部が代謝)→心臓(右房、右室)→肺→心臓(左房、左室)→全身→種々の臓器・組織に分布→標的器官(細胞、臓器)→排泄

 

6.薬の作用(薬理作用)

 薬物によって生体に引き起こされる反応を薬理作用といいます。薬理作用には色々な作用があります。

(1)主作用

 主作用は、薬の作用を治療の面から見て、治療上最も重要な作用をいいます。薬の持つ複数の薬理作用のうち、使用目的と一致する作用です。 

 

(2)副作用

 副作用は、治療的には必要のない有害な作用をいいます。予防・診断・治療などの目的で人に常用量または治療に必要な量を用いたときに現れる、有害で意図しない作用です。

 

(3)薬物相互作用

 薬物相互作用は、複数の薬物を併用した場合の薬理活性の変化(増強、抑制)をいいます。

 

7.薬の作用(薬理作用)に影響を与えるもの

 薬理作用の現れ方は、薬物側・生体側(患者側)それぞれの因子によって大きく影響されます。それぞれの主な因子は下記のとおりです。

(1)薬物側

 薬物の用量、投与方法、併用(2種類以上の薬物を同時に使用)、剤型(カプセル剤、錠剤など)など

 

(2)患者側

  年齢、個体差、疾病の状態、性別、心理的なもの、など

 

8.交通事故の薬物療法

 交通事故の薬物療法では、@救命、A対症療法、B手術・処置、C感染症対策、D消化管・肝機能対策、E腎機能対策、F精神神経症状対策、が重視されています。

 特に救命=脳への酸素供給の維持、が最も重視されています。このために、血圧の維持(昇圧・強心剤、ステロイド剤、輸血、輸液など)、脳圧上昇の予防(脳圧降下剤など)、低酸素血症の予防(気道確保、酸素吸入、人工呼吸、呼吸刺激剤・気管支拡張剤など)が必要とされています。

 

9.薬の関連知識

(1)関連法令−薬事法−

 薬に関する最も重要な法律は「薬事法」です。薬事法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の品質、有効性、安全性を確保することを主な目的とする法律です。 

 

(2)処方せん

 処方せんとは、医師が患者の方を診断して、その時点で薬物療法を必要とすると判断した場合に、薬剤師に対して必要な医薬品と投与量、調剤方法について詳細な指示を行う指示書をいいます(医師法第22条)。

 

(3)医薬品添付文書

 医薬品添付文書は、使用者に医薬品の品質、有効性、安全性についての情報を提供する文書をいいます。特に副作用に関する記載は注意が必要です。医療用医薬品の添付文書情報のホームページからも確認できます。

 

(4)医薬品の名称

 1つの医薬品はいくつかの名称を持っており、一般的には、@化学名、A一般名、B商品名(販売名)、で記されています。 @化学名は、化学物質としての立体構造(化学構造式)を表記したもの、A一般名は、WHOで評価判定され登録された名称で、日本薬局方(薬事法41条で定める医薬品の規格基準書)での掲載名称、B商品名は、薬品メーカーが自社製品に対してつけた名称、です。なお、処方せんや診療報酬明細書には、大部分が商品名で記載されます。

 

(5)新薬開発

  医薬品の研究開発には一般に10年以上の年月と多大な研究開発費を要するといわれています。新薬は、研究、非臨床試験、臨床試験(T〜V)など、数多くの段階を経て有効性と安全性が確認された後に、厚生労働省に承認申請し、審議会などによる審査、承認を経て発売されます。発売後も様々なチェックが義務付けられています。

 

 

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