労災保険と自賠責保険の後遺障害認定手続の特徴・比較

 労災保険の後遺障害認定は、書面審査が中心ですが、労災の顧問医の面接や主治医等に対する医療照会も通常行われ、最初の請求の認定結果が出るのに3〜4ヶ月ほどはかかると思います。

 この認定に対する不服申立(審査請求・再審査請求)の審査はかなり厳密で、等級の変更は容易になされません。労災保険では最初の認定に力を入れていることがうかがわれます。

 これに対して自賠責保険の後遺障害認定は、書面審査だけで顧問医による面接はなく、医師への医療照会も最初の審査では通常行われず、最初の請求は1ヶ月ほどで認定結果が出ます(症状が重い場合等は初回から医師に医療照会を行い、結果が出るまでに半年以上かかることもあります)。

 自賠責保険の異議申し立ての審査も厳密ですが、労災保険よりも等級変更の可能性は高いと思われます。その理由として、自賠責保険は最初の認定結果が出るまでの期間は上記のとおり通常1か月ほどですので、この審査期間からすると、ある程度の異議申し立てがなされること、また、一定の等級変更がなされる可能性があることが想定されていると考えられます。

 労災保険は最初の認定で十分な時間と労力をかけて検討していることがうかがわれ、不服申立があっても簡単には変更されませんので、最初の審査の段階から適正な認定を優先していることがうかがわれます。

 これに対して自賠責保険の方は、大量の案件をある程度定型的に迅速に認定することを優先していることがうかがわれます。

 労災保険は最初の認定の重みが大きいと言えますが、自賠責保険も最初の請求の段階からできるだけきちんとした後遺障害診断書を医師に作成していただくことがとても大切になります(異議申し立て等に影響してくることがあります)。


  労災保険 自賠責保険
主な根拠法 労働者災害補償保険法 自動車損害賠償保障法                
請求先 労働基準監督署 保険会社
認定機関(初回) 同上 損害保険料率算出機構
医師面談 あり(原則) なし
結果が出るまでの期間(初回) 3ヶ月以上 1〜2ヶ月程度
認定基準 障害認定基準(労災補償障害認定必携) 労災保険に準拠
回答文書(初回) ハガキで結論のみ(理由の記載なし) 文書で結論・理由あり
不服申立の回数 審査請求と再審査請求の2回のみ 特に制限なし。但し、(財)自賠責保険・共済紛争処理機構で回答が出た後は不服申立できず。
不服申立の期限 審査請求は3ヶ月以内、再審査請求は2ヶ月以内 特になし(時効はあり)
請求先 審査請求は労働者災害補償保険審査官、再審査請求は労働保険審査会 保険会社または(財)自賠責保険・共済紛争処理機構
認定機関 同上 損害保険料率算出機構または(財)自賠責保険・共済紛争処理機構
回答文書 あり(審査請求では決定書、再審査請求では裁決書) あり
審査の内容 申立の内容以外も審査されることあり 申立の内容のみ
等級が下がるケース あり。但し、不利益変更禁止の規定により労基署の等級を維持 なし
結果が出るまでの期間 3ヶ月以上 保険会社は2ヶ月程度、(財)自賠責保険・共済紛争処理機構は4ヶ月程度
以上
   
(平成28年1月21日作成)