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パワハラ防止法と労災認定のポイント

 職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が最近大きな問題になっており、パワハラ防止法が令和2年6月1日に施行されました。これに伴い、労災保険では精神障害の認定基準も改定されています。 

 下記では、パワハラ防止法と労災認定のポイントについてまとめています。



1.パワハラ防止法のポイント

(1)根拠となる法律

 「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)の第30条の2以降にパワハラ防止に関する規定が新設されており、この部分が一般にパワハラ防止法といわれています。 

 

(2)事業主が講ずべき措置

 事業主は、法律で下記のことを行わなければいけないことが規定されています。

①パワハラを受けた労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じること

②労働者が相談を行つたこと、事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしないこと

 さらに厚生労働大臣は、適切かつ有効な実施を図るため、指針「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針 」を公表しています。 

 

(3)パワハラの定義

 パワハラとは、職場において行われる下記の3つの要素すべてを満たすものと定義されています。

①優越的な関係を背景とした言動 

②業務上必要かつ相当な範囲を超えている 

③労働者の就業環境が害される 

 

(4)パワハラの防止策  

 パワハラの防止策として、下記が求められています。

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 

(5)パワハラが発生した時の対応  

 パワハラが発生した場合には、下記のことを行うことが求められています。

①事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること

② ①により、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

③①により、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと

④改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること

 

2.パワハラに関する労災認定のポイント

(1)概要

 労災保険では業務に起因する精神障害について、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(令和2年8月21日付け基発0821第4号)に基づき認定されています。

 今般のパワハラ防止法の施行に伴い、パワハラにより精神障害を負った場合も労災保険の対象となることが認定基準(「心理的負荷による精神障害の認定基準」の「業務による心理的負荷評価表」)において明記されました。

 この「業務による心理的負荷評価表」の主な変更点は、下記のとおりです。

変更前 変更後
上司や同僚等から、嫌がらせ・いじめや暴行を受けた場合、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた」という具体的出来事に当てはめて、心理的負荷を評価。 上司や同僚等から、嫌がらせ・いじめや暴行を受けた場合、職場における人間関係の優越性等に注目し、心理的負荷を評価。
①優位性ありの場合
 「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という具体的出来事に当てはめて、心理的負荷を評価。「上司等」には、下記が含まれます。
・職務上の地位が上位の者
・同僚や部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合
・同僚や部下からの集団による行為でこれに抵抗または拒絶することが困難な場合

②優位性なしの場合
 「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」という具体的出来事に当てはめて、心理的負荷を評価

 

(2)パワハラに関する新しい認定基準

①心理的負荷の総合評価の視点

 「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という具体的出来事において、心理的負荷が評価される際、下記がポイントとされています。

  • 指導・叱責等の言動に至る経緯や状況
  • 身体的攻撃、精神的攻撃等の内容、程度等
  • 反復・継続など執拗性の状況
  • 就業環境を害する程度 
  • 会社の対応の有無及び内容、改善の状況

 

②心理的負荷の強度判断の具体例

心理的負荷「弱」の具体例 心理的負荷「中」の具体例 心理的負荷「強」の具体例

上司等による身体的攻撃、精神的攻撃等が「強」の程度に至らない場合、心理的負荷の総合評価の視点を踏まえて「弱」又は「中」と評価 

上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた

【「強」である例】
○上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

○上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

○上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

○心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合 

【「弱」になる例】

○上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃、精神的攻撃等が行われた場合 
 

【「中」になる例】
○上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃が行われ、行為が反復・継続していない場合 

治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる叱責他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃 

 

③労災認定のポイント

 パワハラなど業務に起因して精神障害が発生したとして労災認定されるポイントは、下記の通りとされています。

(a)認定基準の対象となる精神障害(対象疾病)を発病していること

(b)発病前のおおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

(c)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したと認められないこと

 パワハラとして労災認定を受けるには、上記(a)から(c)の全てを満たす必要があります。

 また、被災者が主観的にどう受け止めたかでなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという客観的観点から評価されることとされています。

 

3.実際にパワハラを受けた時の対応

 パワハラでは上記2の通り、客観的観点も重視されていますので、1人で抱え込まず、下記の様な対応をとることが望ましいです。

(1)パワハラを受けた日付、時間、どのようなことをされたかなど、できるだけ詳しく記録しておく

(2)職場の同僚、友人、家族などに早めに相談する

(3)会社の相談窓口に相談する

(4)上記(1)〜(3)でも難しい場合、労働局や労基署など専門の第三者に相談する

(5)精神的につらい場合、無理せず心療内科や精神科など専門医を受診する

 以上

(令和6年2月13日更新)

【参考ホームページ】

◇精神障害の労災補償について(厚生労働省)

◇精神障害の労災認定(厚生労働省)

◇心理的負荷による精神障害の認定基準(令和2年8月21日付け基発0821第4号)

◇個別労働紛争制度−労働相談、助言・指導、あっせん(厚生労働省)

【関連ページ】

◇労災保険制度の基礎知識

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