「海馬−脳は疲れない−」を読んで

 脳のことは学んでも学んでもよく分からず、ミステリアスですが、極めて優れた器官であることは分かります。

 人間や自分の脳の特徴を知り、最大限に活用できれば、仕事や日常生活においてストレスを減らし、よりスムーズに色々な事が進むでしょう。

 池谷裕二氏と糸井重里氏が対談形式で脳と記憶についてのやりとりをまとめた「海馬−脳は疲れない−」(新潮文庫)は、このようなニーズに応えてくれる内容でした。

 具体的に印象に残ったところは、下記のとおりです。

 

○大人になってから手を動かすことはても重要。記憶力低下を防ぐことができる。

○生きることに慣れてはいけない。慣れた瞬間から、まわりの世界はつまらないものに見えてしまう。

○脳の働きは、「ものとものとを結びつけて新しい情報をつくっていく」というのが基本。

○脳はもともと刺激を欲している。

○脳は30歳くらいから別の動きに入るよう。つながりを発見する能力が非常に伸びる。やればやるほど、経験メモリー(方法記憶)のつながりが緊密になっていく。

○脳は1000億の神経細胞が集まっていて、世界中の研究者の誰も脳の実体を正確には把握していない。

○神経を1個1個ばらばらにすると、人間もネズミも差がない。しかし、関係性、ネットワークのパターンが違う。同じ人間でも、最低限のつながり方は一緒だが、つなぎ方に個人差がある。それが個性の表れ。

○脳はいつでも元気いっぱいで全然疲れない。疲れるとしたら、目。

○パソコン作業をして疲れたら、席を立って歩き回りながらも同じことを考え続ける。ほんとうの休憩はよくない。

○同じことの繰り返しは脳をだめにする。

○脳の機能を煎じ詰めると、「情報を保存する」と「情報を処理する」のふたつしかない。

○脳の記憶の仕方にとってとても大切な特色は「可塑性」。脳は変化したものを変化したままにしておくという性質がある。

○可塑性とは、記憶できるということ。その記憶を扱っている部位が脳の中で海馬と呼ばれている。海馬は人間の脳の中で最も可塑性に富んだ場所。

○人間が意識できる記憶はとても少ない。同時に意識できる限界は7つ程度。潜在的な記憶が大きく作用している。

○このため脳の本質はうそつき。無意識の世界の方が大きくて無意識というのはほとんどうそつきだから、本当に気づかない、気づけない。

○海馬は生存のために必要な情報かどうか判断して、生存に必要なものを記憶する。勉強で丸暗記しようと思えば、そのままでは脳が欲しいものでないから、その勉強がいかに生存に必要か海馬をだましていくことが重要。

○刺激のない生活は海馬のはたらきを衰えさせるが、ネズミを刺激のある生活に移すと数日で海馬が増える。

○海馬は新しいことを処理する能力に長けている。海馬を破壊されたネズミは、ものすごいストレスがかかり胃潰瘍になる。

○やる気を生み出す脳の場所があり、側坐核というところ。ここの神経細胞が活動すればやる気がでる。ただ、ある程度の刺激が来た時だけ活動をはじめる。このため、とにかくやり始めるしかない。一度はじめるとやっているうちに側坐核が自己興奮してきて、集中力が高まって気分が乗ってくる。

○やる気を持続させるには、内発的な達成感などがある。そのためには目標は小刻みにするのがうまくいく。目標を達成するたびに快楽物質が出てやる気が持続する。また、はじめと終わりは仕事がはかどる(初頭効果と終末効果)。1時間何かやるにしても30分が2回あると思うと、はじめと終わりが1回ずつ増えるから、よりはかどる。

○また扁桃体を活躍させると海馬も活躍する。生命の危機状況が一番扁桃体が活躍する。部屋を寒くするとか、空腹にするのが効果的。

○寝ている間に海馬は情報を整理しているので、睡眠は重要。仮に睡眠を奪ったら海馬は起きている間に記憶の整理を始めてしまう。幻覚が見えることになる。睡眠時間は最低6時間ぐらいは必要で、それ以下だと脳の成績がすごく落ちる。また、毎日のリズムを崩すことも海馬には悪影響。

○クリエイティブな仕事をするには、日常生活で新しい視点を加えることが大切。一つ加えるだけでも、かなり認識の組み合わせ数が増えるため。認識を豊富にしてネットワークを密にしていくことがヒントになる。

 

 このように、本書は一冊まるごと勉強になるところばかりでした。特に、海馬は生存にかかわるとよく活動する、やる気はまず始めないと生まれない、新しい視点を1つでも加えることが大切、との部分は印象に残りました。また、生きることに慣れてはいけない、という言葉には衝撃を受けました。1つずつでも取り入れて実践していきたいと思いました。

 

以上

(令和元年10月11日作成)