交民集6巻1号6頁

Aの従業員Bの運転する路面電車と接触し死亡したXの家族が、Aと信号機を設置したY（東京都）を共同不法行為者として訴訟中、Aとの間では請求を放棄し債権債務がないとする訴訟上の和解を成立させ、Yに対して全損害額を請求した場合に、Aへの免除の効力がYにも及ぶかどうか。

Xらは、右訴訟上の和解によってAとの関係についてのみ相対的にその余の損害賠償債務の支払を求めない趣旨の約定を結んだものにすぎず、Yに対する関係では、本訴請求をそのまま維持する意思であったというべく、しかも、AのXらに対する損害賠償債務と、国家賠償法3条1項、2条1項により責に任ずべきYの損害賠償債務とは、連帯債務の関係にあるとは解されないから、右訴訟上の和解による債務の免除は、Yの右賠償義務を消滅させるものではない。