近年、高齢労働者の増加に伴い、労働災害の発生件数も増加しています。このような状況を踏まえ、高齢労働者の労働災害防止対策を推進するため、労働安全衛生法が改正され、事業者に努力義務が課されることになりました(令和8年4月1日施行)。
高齢労働者の特徴と事業者の努力義務の概要は下記のとおりです。
1.高齢労働者の特徴
(1)高齢者の特徴
高齢者、特に60歳を過ぎる頃からは、心身の機能に様々な変化が現れてくるといわれています。主な特徴は次のとおりです。
①身体機能等の低下
視覚・聴覚機能の低下に加え、筋力(特に脚力)、記憶力、学習能力などの低下が明らかになってきます。
②個人差が大きいこと
一般的な傾向としては①のとおりですが、同じ年齢でも身体機能や認知機能などに大きな個人差が見られることが特徴です。
(2)高齢労働者の事故の特徴
高齢労働者に発生する労働災害は、「転倒」が最も多いとされています。転倒により骨折するケースも少なくなく、その結果、職場復帰に長期間要することがあります。
2.事業者の努力義務の概要
高齢労働者の労働災害を少しでも減らし、一人ひとりが安全で健康に働く職場環境を実現するため、事業者には次のような措置を講ずるよう努めることが求められています。
(1)安全衛生管理体制の確立等
・経営トップの方針表明・体制整備
・小規模事業所を含めた労使での労働災害防止策の話し合い
・職場に潜む危険源(リスク)の洗い出し
(2)職場環境の改善
・身体機能の低下した高齢者でも安全に働ける施設・設備・装置等への改善
・高齢者の特性に配慮した作業内容や作業方法の見直し
・熱中症対策の実施
(3)高齢者の健康や体力の状況把握
・健康診断や体力チェックなどを通じて、高齢労働者自身が健康状態や体力を把握できる取り組みの実施
・産業医などの産業保健スタッフに相談しやすい環境整備
(4)高齢者の健康や体力の状況に応じた対応
・個々の健康状態や体力に応じた運動指導、栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアなどの実施
・疾病を抱えながら働き続ける高齢労働者については、「治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)」に基づいた支援の実施
(5)安全衛生教育の実施
・高齢労働者や管理監督者に対する安全衛生教育
・「転倒」と「腰痛」の予防に重点を置いた教育
・高齢労働者が自身の身体機能の変化に気づき、自覚を深められるような教育
・日頃からの声かけや現場でのコミュニケーションの充実
3.まとめ
労働災害を防止するには、高齢労働者に限らず、職場の一人一人が自分自身の健康状態や身体機能を正しく把握しておくことが大切です。特に高齢者は加齢に伴い、自身の身体機能の変化に気づきにくくなることがあります。例えば、頭では「まだ大丈夫」と思っていても、実際には身体が思うようにに動かず、転倒などの労働災害につながることもあります。
このため、事業者は、日頃から職場環境や作業内容の見直しを行うとともに、危険源の発見・除去、安全衛生教育、職場での声かけなどを継続的に実施することが重要です。こうした取り組みを積み重ねることが、高齢労働者を含め、すべての労働者が安全・安心に働ける職場づくりにつながります。
以上
(令和8年7月6日更新)
【関連ページ】
◇高年齢者の労働災害防止のための指針(厚生労働省ホームページ)
◇「治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)」